土壌生成(内水)理論

【ベーシック文明論「自然と輪廻」内水 護 著】より

新しい自然の解釈

 自然を理解するにあたって、自然を構成する基本要件を奈辺に置くべきか、という問題から論を進めることとしよう。自然の産物である人間にとって自然とは、植物の緑が水分を含んだ大地に密生し、そこここに動物が棲息しており、淡水ならびに海水が低地に湛えられており、地表面ならびに水面から上の空間に大気が存在するものでなくてはならない。とするならば、人間にとっての自然の要素とは水、大地、動植物(生きもの)、大気ということになる。

1、水
 自然の構成要素としての水は、純水であってはならず、適当な割合で、各種ミネラル等を含有し、腐敗菌、病原菌などに対する抑制、滅菌力を内包したものでなくてはならない。また、望むらくは、動植物に対する成長促進作用を内包したものでなくてはならない。

2、大地
 自然の構成要素の大地とは、動植物の物理的支持基盤であると同時に、植物の生育基盤でなくてはならない。植物の生育基盤であるためには、植物に対する無機塩類の供給が永続的に可能でなければならず、そのためには土壌菌群の生棲に適した、もしくは土壌菌群が生棲している土壌でなければならない。このような土壌は、当然のことながら、土壌菌群ならびに植物が生育するための水分をも保有したものでなくてはならず、また同時に、該土壌に動植物の死骸等の形で有機物が持ち込まれる関係から、腐敗菌等、有機物の有害物への変成を促す微生物の生育を抑制する機能を有するものでなくてはならない。

3、大気
 同様に大気とは、大気中に飛散した病原菌に対する抑制力を内包したものであり、また同時により好ましくは動植物に対する成長促進作用を内包したものであらねばならない。

4、動植物(生きもの)
 人間にとっての自然の構成要件が、土壌微生物をはじめとする生きもの、珪酸塩、水、大気であるならば、これら構成要件の挙動を律する基本的なメカニズム・・・生きものがらみの自然の摂理・・・を解明することにより、従来考えられてきた科学領域と全く異質な領域が展開させられるであろうし、また、この新しい科学領域は、自然の産物としての人類に多大の幸せをもたらすものであるに違いない。

〈代謝回路の二重性〉

 一般土壌細菌群のうちの好気性細菌ならびに通性嫌気性細菌は、代謝回路に二重性を具備している。
その1 本来的には遊離酸素の存在下において機能する代謝回路である。
→この代謝回路より産出される代謝産物にはフェノール系化合物が含まれない。
その2 本来的には遊離酸素の不存在下において機能する代謝回路である。
→この代謝回路より産出される代謝産物にはフェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物が含有される。

 その2の代謝回路は、フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物ないしは該代謝産物を含有する物質の存在下においてか、または該土壌細菌群(好気性細菌ならびに通性嫌気細菌)が遊離酸素の不存在下において長期間にわたって土壌性偏性嫌気性細菌群と活発に共棲することによって、機能する。なお、遊離酸素の不存在下における好気性細菌ならびに通性嫌気性細菌への酸素供給は、分子内酸素がドナーを介してなされる。

〈代謝機能の制御〉

 〈代謝回路の二重性〉で述べたように、土壌性好気性細菌ならびに通性嫌気性細菌は、代謝回路に二重性を有している。そのどちらが発現するかは、本来的に当該細菌の棲息環境によって決まるのであるが、人為的環境においては、遊離酸素の存在の有無に関係なく一般的に非フェノール系代謝機能が発現する。仮にフェノール系代謝機能の発現している当該細菌であっても、人為的環境に置かれることによって、通常は、フェノール系代謝作用に代わって非フェノール系代謝活動が発現するよう変性する。

 遊離酸素の存在の有無に関係なく、人為的環境において該細菌群によるフェノール系代謝機能が発現し、継続するためには、一定の条件下において該細菌群が《フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物》の存在下に置かれつづけることが不可欠である。そのためには、系外から《フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物》の添加をなすか、または自然界に存在するフェノール系代謝機能が異常に強化された該細菌群を種菌として活用することが必須となる。

 なお、ここでいう種菌とは、土壌性偏性嫌気性細菌群が、フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物を産出する土壌性通性嫌気性細菌群または該土壌性好気性細菌と通性嫌気性細菌よりなる細菌群と活発に共棲しており、かつ該代謝産物の抗菌作用により、土壌菌以外の細菌群、特に大腸菌、腐敗菌等の雑菌類が不活性化ないしは死滅した状態の細菌群を意味する。

〈抗菌性の機構〉

 およそ微生物は、自己以外の(微)生物に対する抗菌性を有する。抗菌性の発現は微生物代謝産物を介してなされるものであり、したがってある個体から分泌された代謝産物は当該個体以外の(微)生物に対して、ある種属から分泌された代謝産物は当該種属以外の(微)生物に対して、また多種の微生物より構成される群体から分泌された代謝産物は当該群体を構成する種属以外の(微)生物に対して、抗菌性を有する。

 フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む前記微生物代謝産物は、一般土壌細菌群総体としての代謝産物であるところから、該代謝産物は、一般土壌細菌群以外の(微)生物に対しての抗菌性を有するものである。なお、該細菌群による代謝産物の抗菌性が、従来、明確に検知されなかった理由は、該細菌群による代謝回路の二重性に気づかず、しかも該細菌群が人為的環境、特に珪酸塩物質と切り離された状態における人為的環境においては、通常、非フェノール系代謝機能を発現し、非フェノール系代謝回路による代謝産物の抗菌性が微弱であることに起因している。

〈反応機構〉

(1) 基本反応1
 有機物(有機水溶液ならびに含水性有機混合物)は、フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む微生物代謝産物を添加されることにより、急速に結合、粒子化、凝集、縮合、重合し、巨大分子化、塊状産物化する。

(2) 基本反応2
 上記基本反応1に際し、活性化された珪酸分を多量に含む物質が適量添加されれば、腐植化のための重縮合反応を惹起する。

(3) 注記
 なお、上記したフェノール露出基のある化合物には、フェノール露出基のある酸化酵素も含まれており、また活性化した珪酸分を多量に含む物質とは、安山岩質ないしは流紋岩質の組成を有し、かつ火山ガラス、粘土鉱物、ゼオライト鉱物等の活性度の高い不安定な物質をいう。

〈巨大分子化と酵素反応〉

 当該反応は酵素分解とは全く異なった反応である。このことは酵素分解においては反応の進展に伴い生成物の分子量が低下するが、当該反応においては反応系に存在する有機物の分子量が定常的に増大することからも明らかである。また、結合、粒子化、凝集、縮合、重合よりなる当該反応系における巨大分子化と酵素反応との関係は、図-1のとおりであり、微生物代謝産物が常に酵素反応を含む関係から、当該巨大分子化は非分解型の酵素反応と同時進行することになる。

図―1 巨大分子化と酵素反応

土壌生成(内水)理論1

〈反応形態と微生物の役割〉

 該巨大分子化は有機物がフェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む微生物代謝産物、または該代謝産物ならびに活性化された珪酸分を多量に含む物質と接触することにより惹起する物理化学反応であり、また同時に、土壌性好気性細菌ならびに通性嫌気性細菌が、その代謝産物中にフェノールおよび/またはフェノール露出基のある化合物を含有するよう馴致されうるものであるところから、該代謝産物による巨大分子化反応は、図―2に示した諸形態をとりうることが判明する。

図―2 巨大分子化反応の諸形態

土壌生成(内水)理論2

 反応Aは、微生物代謝産物(RSⅠ)ないしは微生物代謝産物(RSⅠ)を含有する物質を直接反応に利用する形態である。反応Bは、微生物代謝産物(RSⅠ)ないしは微生物代謝産物(RSⅠ)を含有する物質の作用により、土壌性好気性細菌ならびに通性嫌気細菌よりなる細菌群を、フェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を生成すべく馴致し、その結果産出する微生物代謝産物(RSⅡ)により惹起する反応である。また、反応Cは、すでにフェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を生成するように馴致された土壌性好気性細菌ならびに通性嫌気性細菌よりなる細菌群を種菌として投入し、該細菌群により誘導された細菌群によって産出される代謝産物(RSⅡ)により生起する反応である。

 なお、図-3にフェノールまたは/およびフェノール露出基のある化合物を含む微生物代謝産物(RSⅠ)を含有する物質を反応系に添加した場合の諸相を示すが、この図から、以上に述べた反応形態が明確に読みとれよう。

図-3 巨大分子化反応の進展

土壌生成(内水)理論3

〈反応生成物とキレート構造〉

 フェノールおよび/またはフェノール露出基のある化合物の存在下において惹起する前記基本反応1、ならびに基本反応2による反応生成物は、キレート構造を有しており、キレート内面は+、-基の集合体になっている。したがって、該代謝産物の存在下においては、反応生成物の+、-基におけるイオン性物質の置換ならびにキレート構造の成長、変形によって、また同時に有機酸ならびに有機酸塩の生成によって、反応系のpH変動ならびにイオン性物質の反応系内における拠動が決まる。

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